星野合同事務所

著作権の登録制度

著作権登録の重要性

登録制度の第一の意義は、著作権が特許権のように審査や登録手続きを経ることなく成立し、保護の対象となることに対応するものです。その裏返しで、誰が本当の権利者であるのか、不明確におかれる嫌いがあります。著作者が創作日を対外的に証明することで、著作者であることの証明に代えることが、第一の意義です。

登録制度の第二の意義は、著作権が一種の財産権として取引の対象となり、その取引の安全をえる必要があることに対応するものです。著作者から著作物を譲り受けた際に、登録しておくことで、二重に譲渡を受けた第三者などに対抗することができます。

「第三者に対抗することができる」とは

著作権の譲渡は一般的には契約によって行われますが、その著作権がある人に譲渡されたにもかかわらず、同じ著作権が2重に譲渡されることもありえます。

例えば著作者Xさんから、Aさんに著作権の譲渡が行われたにもかかわらず、同じ日にBさんに著作権の譲渡が行われたような場合です。この場合、同一の著作権が別の人に譲渡されることとなりますので、どちらが本当の著作権者であるか争いが生じることとなります。

そのため、著作権の取引の安全性を確保するために著作権の譲渡の登録制度が設けられています。

著作権の登録がされると、先のAさんとBさんのうち、どちらの著作権譲渡契約が早く締結されたかどうかにかかわらず、登録名義人が著作権者として法律上取り扱われることとなり、権利の侵害をする者に対してその侵害を差止めたり、損害賠償の請求等をすることが可能となります。これを第三者に対抗することができるといいます。この点では著作権の登録は、不動産登記に似た制度といえます。

(例)

上記の例ですと、5月1日にXさんからAさんへ、著作権の譲渡を行う契約が締結されましたが、Aさんは著作権の登録を行いませんでした。

一方、それよりも遅い5月10日にXさんからBさんへの著作権の譲渡を行う契約が締結され、Bさんは翌日著作権の登録を行いました。

この場合の著作権者は、著作権の登録を先に行ったBさんとなり、契約を先に締結したにもかかわらずAさんは著作権者とはなれないため、複製権や展示権は取得できないこととなります。

ただし、著作者(Xさん)についてはこの著作権の登録を行わなくとも、著作物を創作した時点で自動的に著作権を取得します。あくまでも著作権の移転や、質権の設定が行われた場合に利用できる制度であることに留意する必要があります。

同様に、相続や合併・分割等の場合であっても、著作権が一般承継(包括承継)されますので、第三者に対する対抗要件の問題は生じないため、著作権の登録の必要はありません。