星野合同事務所

著作権

著作権とは

著作権とは、著作者が自分の気持ちを自分なりに工夫して表現して作り出された文化的産物(著作物)を利用する権利です。

著作権法はこの著作物(文化的産物)を次のように定義づけています。

「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)

この定義のポイントは、以下の点にあります。

第一に「表現したもの」であることが著作物である為に必要で、「思想又は感情(「アイデア」といいます)」それだけでは、保護の対象とならず、利用することも自由です。

第二に、「文学、芸術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と規定されています。例えば工業製品のデザインはこの範疇には入りません。

著作物の種類

著作物は著作者の気持ちを著作者なりに工夫して表現した文化的産物ですので様々な種類があります。

著作者の取得する権利

著作者は作品を作った時点で、自然的に著作権を取得できます。他の特許や実用新案・商標登録等、著作権に似たアイデアを保護する制度があり、これらは登録が必要となりますが、著作権は作品を作った段階で登録をしなくても以下に挙げる著作権を取得できます。

1.著作者人格権

思想・表現の自由が基本的人権として憲法で認められているように、著作権法においても、著作物において自らの思想や表現を行った著作者を保護する権利として、以下の3つが規定されています。

後述する著作権が財産的な権利であるのに対し、著作者人格権はその名の通り、人格的な権利です。著作権は他人に譲渡でき、相続の対象にもなりますが、著作者人格権は譲渡できず、著作者が死亡しても相続されません。

2.著作権

著作権は、著作者に与えられる権利の内、財産的な権利のみをいいます。権利の束(たば)といわれるように、以下に挙げる様々な権利の複合体といえます。

従って、著作物の利用方法に応じて、必要とされる権利を特定し、適切な権利処理を行う必要があります。

これらの権利は著作物の種類の特性から存在しない場合があります。

著作権契約について

1.映画に関する契約と権利処理

映画製作の資金に関し、わが国では、複数企業で分担する製作委員会方式を採用しているケースが主流です。製作者が製作委員会を結成する場合、組合契約を締結し、メンバー中の1社が代表して外部との各種契約を締結することになります。組合契約に代えて、最近では有限責任事業組合、投資事業有限責任組合といった形態を用いるケースも増えており、これらの場合、法人として登記を行います。

製作委員会は、映画製作にかかわる諸スタッフと契約を締結します。製作委員会にプロダクションが含まれない場合、外部制作プロダクションと製作委託契約を締結します。

プロダクションは、製作の統括責任者である監督と契約します。日本では、著作権は、監督に発生しつつ、法律上当然にプロダクションに譲渡されたもの、とみなされます。それによって、監督には著作者人格権のみ残され、二次使用料請求権は無いのが法律上の原則ですが、日本映画監督協会という業界団体が存在し、二次使用料の支払を取り決めていますので、当該映画監督がそこに所属しているなら、それに従って支払いがなされることになります。

映画に原作がある場合、原作者ないし出版社と映画化権契約を締結します。原作の作者(クラシカルオーサー)は、映画それ自体の著作者(モダンオーサー)とは異なり、映画自体の著作権者ではありません。

脚本家については、原作者と同様にクラシカルオーサーで映画自体の著作者ではありませんが、日本シナリオ作家協会や日本脚本家連盟といった業界団体が存在し、脚本の管理委託を受けており、二次利用料に関する報酬基準も定めていますので、脚本家が当該団体に所属しておれば、それに則った契約を結ぶこととなります。

出演者に関しては、直接に契約主体になることは稀であり、所属するマネジメント会社との間で出演契約を締結することとなります。関連商品への肖像の転用、プロモーションへの協力、競合出演への制限等を規定します。実演の録音・録画の二次使用料については、公益社団法人日本芸能実演家団体協議会が徴収を代行しています。

2.出版に関する契約と権利処理

著作物を出版するための契約には、以下の4形態があります。

  1. 作家から著作権の譲渡を受ける
  2. 作家から複製権と譲渡権の譲渡を受ける
  3. 作家から出版(複製と譲渡)の許諾を受ける
  4. 作家から出版権の設定を受ける。

最も多いのは4.出版権設定契約です。出版権は著作権でなく、著作権者から設定を受けることで成立する権利です。出版権の具体的内容は設定行為によって定められ、それは出版権設定契約の形態をとります。出版権には、著作権と同様に、第三者対抗の為の登録制度があります。

1.著作権の譲渡においては、著作者人格権を除いて出版に関して著作権的に制約のない状態が実現する点にメリットがあります。複写権、公衆送信権の許諾を頻繁に求められるところから、理工学書や医学書において多くなっている契約形態です。

3.音楽に関する契約と権利処理

作詞家・作曲家は、音楽の著作者ですが、その著作権は一般に、JASRAC(一般社団法人音楽著作権協会)に信託されています。作詞家・作曲家個人ではなく、彼らから音楽出版社に著作権が譲渡され、音楽出版社がJASACに信託しているケースも多くみられます。いずれにせよ、音楽の利用に際しては、JASRACから許諾を得る必要があります。JASRACは第三者に利用を許諾し、使用料を徴収し、管理手数料を控除して権利者に分配しています。

音楽出版社は、作詞家・作曲家と曲ごとに著作権譲渡契約を締結しています。譲渡を受けた著作権はJASRACなど著作権管理事業者に預けています。音楽出版社は、一般社団法人音楽出版社協会を結成しており、そちらが著作権譲渡契約書雛形も提供しています。音楽出版社は、音楽の特定の利用形態について、JACRACに譲渡せず、自ら管理していることもあります。また、二次的著作物の利用権は預けられていますが、編曲・翻案権は預けておらず、それらの許諾は音楽出版社から得る必要があります。

JACRACを代表とする、他人の著作権を管理し、使用料を徴収している事業者を、著作権等管理事業者といいます。著作権等管理事業法により、文化庁への登録が義務付けられています。

アーティストは、著作権法上は実演家といい、その実演に関する著作隣接権を保護されています。アーティストの多くはプロダクションに所属しています。アーティストとプロダクションの間の契約は、雇用契約ないし準委任または請負契約と様々です。一般には一定期間の専属契約とされ、著作隣接権もプロダクションに帰属とされます。プロダクションは、外部のレコード会社や放送局と契約し、アーティストに実演を行わせます。プロダクションは付随して、音楽出版社を兼ね、さらには自らテレビ番組やコンサートの制作を手掛けることもあります。

音楽CDの製造・販売を行う事業者はレコード会社です。これとは別に、アーティストによる実演を固定した、レコード原盤を制作するレコード製作者があります。レコード会社は自らレコード製作者になることもありますが、音楽出版社などがレコード製作者になってそこから原盤の譲渡を受ける、あるいはレコード製造の許諾を受ける、など様々な契約形態をとっています。レコード原盤に関する著作隣接権は、著作権法上の規定はありませんが、原盤権と呼ばれます。レコード製作者とレコード会社は、原盤譲渡契約ないし原盤供給契約を結ぶことになります。