星野合同事務所

事業用定期借地権

借地借家法の改正点

平成20年1月1日から改正借地借家法が施行され、事業用借地権の存続期間の上限が現在の10年以上20年以下から10年以上50年未満に引き上げられました。改正点は次の3点です。

  1. 30年以上50年未満の期間については、同じ期間で普通借地権を設定することができ、法律上当然に、契約の更新があり、建物を再築した場合には存続期間が延長され、期間満了時には建物買取請求権が行使できるといった保護が与えられることになります。
    そこで、30年以上50年未満の期間で事業用借地権を設定する場合には、当事者間の特約により、借主に対してこれらの保護が与えられない旨を定めることができることとし、この特約の有無により事業用借地権と普通借地権を区別することとしました(借地借家法第23条第1項)。
  2. 10年以上30年未満の期間については、そもそも設定できる借地権が事業用借地権だけですので、特約の有無によって、定期借地権と普通借地権とを区別する必要がありません。そこで単純に、法律上、契約の更新等に関する規定を排除すれば十分ですので、そのような規定となっています(同第23条第2項)。
  3. 公正証書による契約が必要となるのは従来の事業用定期借地権と変わりません(同第23条3項)。

事業用定期借地権等

  • 第二十三条 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を三十年以上五十年未満として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。
  • 2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を十年以上三十年未満として借地権を設定する場合には、第三条から第八条まで、第十三条及び第十八条の規定は、適用しない。
  • 3 前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。

改正により土地所有者にとっても貸しやすくなる等のメリット

この改正により借地人となる事業者にとっては事業内容や建物の構造・償却年数に応じた存続期間の設定が可能となり、比較的長期の事業であっても採算性が確保されるようになると考えられています。また、より所有者・ユーザー双方のニーズに応じた期間の設定が可能となるため土地所有者にとっても貸しやすくなる等のメリットがあるといえます。

特別な借地権の場合は事業用借地権としての登記がおすすめ

定期借地権全般にも言えることですが、通常の借地権とは異なり、更新や建物買取請求が認められない特別な借地権であることを第三者に対抗するためには、事業用借地権としての登記をすることが必要となります。そのため、契約時において公正証書の中で、事業用借地権の登記をする旨を明確に定めておくことをおすすめします。