不動産登記における法人の資格証明書の添付の廃止について
2015.03.16更新
不動産登記における法人の資格証明書の添付の廃止について
例えば、東京都新宿区に本店がある会社が東京都新宿区にある土地を売却する場合、その資格証明書は、省略できることになります。
つまり、会社が不動産登記を申請する場合、その不動産の登記所の管轄とその会社の登記所の管轄が同一である場合は、(指定登記所を除く、)会社の資格証明書を省略できる取扱いになっています。これは、登記所が同一であれば、会社の登記記録を登記官が直接確認できるという理由からでした。
ところで、現在、会社の登記記録はコンピューター化・ネットワーク化され、他の管轄の会社の登記記録も確認できるようになりました。このため、不動産の登記の管轄と会社の登記の管轄とが異なっていても、資格証明書の添付は不要としてもよいのではないか、という疑問が生じます。
すなわち、東京都新宿区に本店がある会社が東京都渋谷区にある土地を売却する場合であっても、渋谷出張所の登記官は、新宿出張所の会社の登記記録をコンピューターで確認することができるため、あえて資格証明書を添付する必要はないのではないか、ということです。
現在、平成26年度中の実施を目途に、登記所の管轄にかかわらず、資格証明書の添付を要しないものとする旨の政令・省令の改正が検討されています。
いままで添付していた資格証明書が添付不要になるため、不動産登記を申請する会社にとっては、資格証明書を取得する手数と費用がかからなくなるというメリットがあります。
特に、不動産登記を多数申請する不動産会社、銀行等の金融機関にとっては、大きなメリットになるものと思われます。
一方、不動産登記の実務への影響も、大きいものと思われます。
従来、会社が不動産登記を申請する場合は、その資格証明書を添付することにより本店・商号・代表者について確認していました。しかし、改正後は、本店・商号・代表者については登記所において、その時点の登記記録を確認するものとされ、仮に資格証明書を添付しても、その証明書についての審査は行わず、証明書は返却されるという取扱いになるようです。
今後、登記所の管轄にかかわらず、資格証明書の添付を要しないものとすることとなった場合は、不動産登記に関する書類を準備する際に、不動産登記を申請する日までに、会社の本店・商号・代表者を変更する予定がないかどうか、十分注意する必要がありそうです。