星野合同事務所

パートタイム労働法が変わります

2015.03.09更新

パートタイム労働法が変わります

パートタイム労働法(「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)は、パートタイム労働者(※)がその能力を有効に発揮することができる雇用環境を整備するとともに、その働きや貢献に応じた待遇を得ることができるようにしてパートタイム労働者の福祉増進を図ることを目的とした法律です。平成27年4月1日から、より一層の実現を図るため改正法が施行されることになっています。

※パートタイム労働者
パートタイム労働法の対象となるパートタイム労働者とは、「一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比べて短い労働者」をいいます。

【主な改正点1】パートタイム労働者の公正な待遇の確保

(1)正社員と差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者の対象範囲の拡大
現行法では①職務内容及び人材活用の仕組みが正社員と同一であり②無期労働契約を締結している労働者について、正社員との差別的扱いが禁止されていましたが、改正法では、有期労働契約を締結しているパートタイム労働者であっても①に該当する場合には正社員との差別的な取扱いが禁止されます。

(2)「短時間労働者の待遇の原則」の新設
事業主が、正社員とパートタイム労働者の待遇を相違させる場合には、職務の内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮し、不合理と認められるものであってはならないとする、広く全てのパートタイム労働者を対象とした待遇の原則規定が新設されます。

(3)職務の内容に密接に関連して支払われる通勤手当は均衡確保の努力義務の対象に
「通勤手当」という名称であっても、距離や実際にかかっている経費に関係なく、職務の内容に密接に関連して支払われているものについては、正社員との均衡を考慮しつつ、パートタイム労働者の職務の内容、成果、意欲、能力、経験等を勘案して決定するよう努める必要があります。

【主な改正点2】パートタイム労働者の納得性を高めるための措置

(1)パートタイム労働者に対する事業主による説明義務の新設、不利益取扱いの禁止
事業主は、パートタイム労働者を雇用したときは、実施する雇用管理の改善措置の内容を説明しなければなりません。また、パートタイム労働者から説明を求められたときの説明義務とあわせて、パートタイム労働者が理解できるような説明をしていく必要があります。
さらに、事業主は、パートタイム労働者が上記説明を求めたことを理由に不利益な取扱いをしてはなりません。

(2)パートタイム労働者からの相談に対応するための体制整備の義務の新設、相談窓口の周知
事業主は、パートタイム労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければなりません。また、パートタイム労働者を雇い入れる際には、「相談窓口(相談担当者の氏名、役職、担当部署等)」を文書の交付などにより明示しなければなりません。

【主な改正点3】パートタイム労働法の実効性を高めるための規定の新設

(1)厚生労働大臣の勧告に従わない事業主の公表制度の新設
雇用管理の改善措置の規定に違反している事業主に対して、厚生労働大臣が勧告をしても事業主がこれに従わない場合、厚生労働大臣は、この事業主名を公表できることとなります。

(2)虚偽の報告などをした事業主に対する過料の新設
事業主がパートタイム労働法の規定に基づく報告をしなかったり、虚偽の報告をした場合には、20万円以下の過料に処せられます。

就業構造の変化・働き方の多様化が進んだ現在、パートタイムという働き方が定着しています。今後、多くの事業主側でパートタイム労働者のより適正な雇用管理が求められることになりそうです。