地位確認等請求訴訟【マタハラ訴訟】最高裁判決
2014.11.04更新
地位確認等請求訴訟【マタハラ訴訟】最高裁判決
最高裁判所が平成26年10月23日、「妊娠を理由に雇用主が行った労働者への降格の措置は、男女雇用機会均等法(以下単に「均等法」といいます。)に、原則違反する」との初めての判断を下しました。
判決文原文
広島市の病院に勤めていた理学療法士の女性が運営元に対し、妊娠を理由にした降格は、均等法に違反するとして、損害賠償などを求めた地位確認等請求訴訟で、第一審および二審では、女性側敗訴の判決が言渡されていました。
当該判決を不服とし、女性側が最高裁判所へ上告していたところ、上告審判決で最高裁判所は、「一般に降格は労働者に不利な影響をもたらす処遇であるところ、均等法1条及び2条の規定する同法の目的及び基本的理念やこれらに基づいて同法9条3項の規制が設けられた趣旨及び目的に照らせば、女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として同項の禁止する取扱いに当たるものと解される」とし、例外として「①当該労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度、上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして、当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき、又は②事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして、上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在する」ときは、同項の禁止する取扱いに当たらないものと解するのが相当であると判示しました。
そして、「上記の①「承諾」に係る合理的な理由に関しては、上記の有利又は不利な影響の内容や程度の評価に当たって、上記措置の前後における職務内容の実質、業務上の負担の内容や程度、労働条件の内容等を勘案し、当該労働者が上記措置による影響につき事業主から適切な説明を受けて十分に理解した上でその諾否を決定し得たか否かという観点から、その存否を判断すべきものと解され、また、上記②「特段の事情」に関しては、上記の業務上の必要性の有無及びその内容や程度の評価に当たって、当該労働者の転換後の業務の性質や内容、転換後の職場の組織や業務態勢及び人員配置の状況、当該労働者の知識や経験等を勘案するとともに、上記の有利又は不利な影響の内容や程度の評価に当たって、上記措置に係る経緯や当該労働者の意向等をも勘案して、その存否を判断すべき」であるとし、女性側敗訴とした第一審、二審判決を取り消して、広島高等裁判所に差し戻しました。
妊娠や出産をきっかけに勤務先から解雇されたり、減給、降格されたりするなどの嫌がらせを受ける、いわゆる「マタニティ・ハラスメント」は、近年、クローズアップされることが多く、今回の最高裁判所の判決の行方に注目が集まっていました。実感としては、妥当な判断だと考えますが、最高裁判所も、かなり踏み込んだ判断をしたのではないかと思います。
本件ついては、今後、上記最高裁判所判決に基づいて、本件降格措置につき、①女性の自由な意思に基づいて降格を承諾したか、②均等法の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するか、などが改めて広島高等裁判所で詳細に審理されることになります。