過払金に関する9月4日最高裁判決
2009.09.25更新
過払金に関する9月4日最高裁判決
近年、貸金業者に対し過払金返還を求める訴訟の増加に呼応して、重要な最高裁判例が次々と示されていますが、去る9月4日、また2つの判決が示されました。
■過払金の利息はいつから発生するか
一つは、過払金に付されるべき利息の発生時点に関するものです。最高裁平成21年1月22日判決では、過払金返還請求権の消滅時効の起算点に関し、取引終了時から起算されるとの基準が示されましたが、この判決を逆手に取った貸金業者から、過払金に付されるべき利息も取引終了時以降から計算すべきと主張されることが増えていました。
9月4日の最高裁判決では、この点につき、
貸主が悪意の受益者であるときは、貸主は、民法704条前段の規定に基づき、過払金発生の時から同条前段所定の利息を支払わなければならない。
と判示し、上記のような貸金業者の主張を排斥しました。これにより、過払金利息の発生時点に関する主張の争いは、収束する方向に向かうものと考えられます。
■過払金の受領は不法行為となるか
もう一つは、利息制限法による引直し計算をすると過払金が発生しているにも関わらず、貸金業者が過払金を受領し続ける行為が、架空請求にも準じ、不法行為を構成するものとして、過払金相当額を損害賠償請求できるか否かに関するものです。この点については、下級審において、これを不法行為として損害賠償を認める判決も現れていたところでしたが、9月4日の最高裁判決では、下記のとおり判示して、当該事案について不法行為の成立を認めませんでした。
一般に、貸金業者が、借主に対し貸金の支払を請求し、借主から弁済を受ける行為それ自体は、当該貸金債権が存在しないと事後的に判断されたことや、長期間にわたり制限超過部分を含む弁済を受けたことにより結果的に過払金が多額となったことのみをもって直ちに不法行為を構成するということはできず、これが不法行為を構成するのは、上記請求ないし受領が暴行、脅迫等を伴うものであったり、貸金業者が当該貸金債権が事実的、法律的根拠を欠くものであることを知りながら、又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに、あえてその請求をしたりしたなど、その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合に限られるものと解される。この理は、当該貸金業者が過払金の受領につき、民法704条所定の悪意の受益者であると推定される場合においても異なるところはない。
この判決で示された基準によると、貸金業者に対し、不法行為を理由として過払金返還請求できるケースは、限定的になってくるものと考えられます。
■ご相談はお早めに
貸金業者と取引されてきた方の借金整理において、過払金が発生している場合、取引期間が長期に及んでいるとその金額が多額になることもあるため、その回収の可否が大変重要となってきます。上記最高裁判例の事案も、過払金を最大限回収し、借り手を保護すべく提訴されたものと思われますが、最近では、法律的には過払金の返還請求をなしうる場合でも、貸金業者の経営体力低下等の理由から、その迅速な回収が困難になりつつあるのも事実です。こうした実情も踏まえ、借金で悩まれている方は、お早めに専門家にご相談頂くことをお勧めいたします。