星野合同事務所

在日外国人の遺言書

2009.07.29更新

遺言書の作成が年々増加しているようですが、日本にいる外国人の方が遺言書を残したい場合、どの国の法律が適用されるのか(準拠法)を検討しなければなりません。大別すると、遺言書の作成方法(方式)と遺言での法律行為の内容、遺言の成立及び効力について、それぞれの準拠法を考える必要があります。

1.遺言の作成方法(方式)の準拠法

遺言の方式の準拠法に関する法律第2条は、方式について次のとおり規定しています。

(準拠法)
第2条 遺言は、その方式が次に掲げる法のいずれかに適合するときは、方式に関し有効とする。

  1. 行為地法
  2. 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時国籍を有した地の法
  3. 遺言書が遺言の成立又は死亡の当時住所を有した地の法
  4. 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時常居所を有した地の法
  5. 不動産に関する遺言について、その不動産の所在地法

したがって、在日外国人であれば、上記3号または4号に基づき、日本の法律(民法)による方式(自筆証書遺言・公正証書遺言等)で行うことが可能です。

2.遺言での法律行為の内容についての準拠法

相続については被相続人の本国法に従うものとされている(法の適用に関する通則法第36条)ため、在日外国人が日本の方式で遺言書を作成したとしても、相続については国籍を有する本国法に従うことになります。

3.遺言の成立及び効力についての準拠法

法の適用に関する通則法第37条は、遺言の成立及び効力について、「その成立の当時における遺言者の本国法による」と規定しており、遺言の成立とは、遺言能力・遺言者の意思表示の瑕疵など、効力とは遺言の効力の発生時期・条件・取り消しの可否などのことです。

なお、法の適用に関する通則法で「本国法による」として日本の法以外の法を適用する場合でも、その本国法が遺言の準拠法を行為地(遺言地)法と規定している場合は反致(はんち)と呼ばれ、日本の法が適用されることになります(法の適用に関する通則法第41条)。

4.日本法方式による公正証書遺言の作成

在日外国人の方が日本の公正証書遺言の方式に従い遺言書を残す場合は次のとおりです。

(1)言語
日本語で作成される(公証人法27条)
(2)身元確認方法
印鑑登録証明書、本国政府発行の旅券、外国人登録証明のいずれか(公証人法28条)
(3)証人
2人必要
(4)遺言執行者
本国法に従う
(5)必要書類
遺言者と受遺者のつながりがわかる書面(例えば親が同一であることのわかるような書面)、その他財産の種類による

在日外国人は日本の方式に従い遺言を残すことができますが、その法的有効性については本国法において相続や遺言についてどのように規定されているかによるため、本国法の調査が必要となります。

日本に(距離的・関係性等)近い国の場合は調査も比較的容易で、例えば、韓国籍の方については反致により法律上有効に日本方式を用いて遺言書を残すことができます。しかし、国によっては法律自体が整備されていないなど困難を伴うこともあります。