星野合同事務所

信託受益権売買と信託解除時の不動産取得税について

2008.06.11更新

信託受益権売買と信託解除時の不動産取得税について

現在、不動産の管理や運用を信託銀行などに委託する不動産信託は広く行われております。しかしながら、この際の信託受益権売買と信託解除時の不動産取得税について課税されるケースと非課税となるケースはあまり知られていないのではないでしょうか?

ここでは想定される3つのケースを用いて、それぞれを解説していきます。

パターン1(委託者兼当初受益者から信託受益権の売買が無いケース)

  1. Aが現物の不動産をBに信託し、信託受益権を留保します。
  2. Aは信託不動産をBから取り戻し、信託契約を解除した後は現物不動産として保有します。
  • 1.の第1のA:非課税
  • 1.の第2のA:地方税法73条の7の4号により非課税(「信託の効力が生じたときから引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である」という要件を満たします)
  • 1.のB:非課税(不動産の所有者が信託銀行などに不動産を信託しても、信託銀行等に不動産取得税は課税されません。)

パターン2(委託者兼当初受益者から信託受益権の売買があるケース)

  1. Aは既に信託が設定されている不動産につき、信託受益権をBに売却します。
  2. Bは信託受益権の移転を受けて信託契約を解除し、以後は現物不動産として保有します。
  • 2.のA:非課税(信託受益権の売買だけでは、不動産取得税はかかりません)
  • 2.のB:信託受益権の売買だけでは、不動産取得税はかかりませんが、現物化した時点で実質的な所有者の変更があったと考えられ、地方税法73条の7の4号が適用されないため、不動産取得税が課税されます

パターン3(信託受益権の売買され、最後に委託者兼当初受益者が保有するケース)

  1. Aは既に信託が設定されている不動産につき、信託受益権をBに売却します。
  2. Bは信託受益権をAに売却します。
  3. Aは信託受益権の移転を受けて信託契約を解除し、以後は現物不動産として保有します。
  • 3.の第1のA:信託受益権の売買だけでは、不動産取得税はかかりません
  • 3.の第2のA:AはいったんBに信託受益権を売却しているため、地方税法73条の7の4号「信託の効力が生じたときから引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である信託」の要件を満たさないため、不動産取得税が課税されます。
  • 3.のB:非課税(信託受益権の売買だけでは、不動産取得税はかかりません)

基本となる条文

  • 地方税法第73条の7:道府県は、次に掲げる不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができない
  • 地方税法73条の7の3号:委託者から受託者に信託財産を移す場合における不動産の取得(当該信託財産の移転が第73条の2第2項本文の規定に該当する場合における不動産の取得を除く。)※この条文により、不動産の所有者が信託銀行などに不動産を信託しても、不動産取得税は課税されません。
  • 地方税法73条の7の4号:信託の効力が生じたときから引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である信託により受託者から当該受益者(当該信託の効力が生じた時から引き続き委託者である者に限る。)に信託財産を移す場合における不動産の取得