星野合同事務所

【Close up】 Vol.105 外国人が日本に入国するときは/認知症患者の家族の損害賠償責任

2016.03.31更新

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  CLOSE UP    VOL.105  司法書士法人・行政書士法人 星野合同事務所

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇2016/3/31◇━━

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★ INDEX
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  【1】外国人が日本に入国するときは
  【2】認知症患者の家族の損害賠償責任
  【3】あいうえお順で覚える!!法律用語
  【4】ラジオ番組レポート!
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【1】外国人が日本に入国するときは (その期間、目的によって国内外における手続き)
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外国人が日本で滞在する時に、VISAを変更する、VISAを延長する等々言われます。
また、日本人が外国に行く際も、VISAを取る等々言われます。
混同しやすい用語で「VISA」と「在留資格」がありますので、
ここで一度整理してみます。

日本に外国人が入国して滞在するためには、
その目的を明らかにしなければなりません。
そして、日本においては、
 ・入国の審査 → 外務省と法務省
 ・滞在の審査 → 法務省
が行います。

VISAの申請は、日本の在外公館(日本大使館・日本領事館等)で行いますが、
短期滞在以外の活動(就労活動・家族滞在等)を日本で行う場合、
就労活動・家族滞在等、入国後滞在する際の活動の審査は
日本の法務省でされます。
在外公館は外務省の所管なので、在外公館で就労活動の審査はできず、
その審査は、在外公館から外務省に伝えられ、
外務省から法務省に伝えられ、
それから入国管理局において審査が行われるので
非常に時間がかかります。

そこで、あらかじめ日本国内の会社(日本での勤務先)が、
外国人を呼び寄せるために雇用契約書等を提出して

在留資格認定証明書
(=Certificate Of Eligibility、長いので頭文字でCOEと言われます。)

の申請を行い、COEを取得後、COEを外国人に送付し、
その外国人が在外公館にてVISAの申請をします。
この時は、入国後の活動はCOEによって
法務省が認めていることが証明されているので、
在外公館は、入国していいかどうかの判断のみすればよく、
短期間(およそ5日から1週間程度)で審査が済みます。

このようにVISA(査証)とは、在外公館の発行する、
その外国人が日本に入国していいよ、と日本の入国の際に伝える証明で、
言わば入国の際の通行手形・通行許可証のようなものです。
つまり、VISAは入国の際に使用し、その機能は終えます。
そのため入国後は捨てても問題ありません
(パスポートに貼り付けられているので、捨てられませんが・・・)。
しかし(ここからが混同の原因なのですが)
そのVISAというスタンプ(日本の場合シール)の中に記載された、
入国後行うことのできる活動(=在留資格)に基づいて、
その外国人はその後日本に滞在することができます。

まとめると、日本に滞在できる許可をもらう(=在留資格認定証明書交付申請)
その後で、日本に入国する許可をもらう(=VISAの申請)
ということとなります。
日本に入国するときはVISAを使い、
その後の滞在は在留資格によって行います。

年度末を迎え、外国人の採用、また、
勤務している外国人の在留期間の更新が増えてくる時期です。
VISA・在留資格でお困りの際は、お気軽にご相談いただければと思います。



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【2】認知症患者の家族の損害賠償責任(平成28年3月1日最高裁判決の判断枠組)
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認知症の方の損害賠償責任を、その家族が果たして負担することになるのか――
その判断枠組を最高裁として初めて示した平成28年3月1日の最高裁判決は、
ニュース等でも大きく報道されました。
「介護の実情に配慮した画期的な判断」「認知症患者の家族に大変温かい判決」
などと世間では評価されていますが、実のところどうなのでしょうか。
ここで今一度、最高裁の示した判断枠組を簡潔にまとめてみたいと思います。
(以下の記述は多数意見の判断枠組であり、
各裁判官の補足意見及び意見では異なった判断をしているものがあります)


【最高裁の判断枠組(1)】
認知症家族が、民法第714条第1項上
「監督する法定の義務を負う者」に該当するか否か  ⇒ 一般論として否定

本判決の事案では、大手鉄道会社の運行する列車にはねられて死亡した
認知症の方の妻と長男が訴えられ、
両者が認知症の方を「監督する法定の義務を負う者」(民法第714条第1項本文)
として損害賠償責任を負うかどうかがまず判断されました。
最高裁は妻、長男ともこれに当たらないと判断しましたが、その理由として、
民法第752条の定める夫婦同居協力義務や同第858条の後見人の身上配慮義務は、
妻や長男を「監督する法定の義務を負う者」と判定する
実定法上の根拠とならないと述べています。
そうすると、本判決の事案のみならず、一般論として認知症患者の家族は
「監督する法定の義務を負う者」には当たらないので、
民法第714条が直接適用され損害賠償責任を負担することにはならない、
と考えることが可能です。
よって、今後も認知症の方の家族が直接、民法第714条第1項に基づく
損害賠償責任を負う可能性は低くなったと言えます。


【最高裁の判断枠組(2)】
認知症家族が、法定の監督義務者に準ずべき者(民法第714条第1項類推適用)に
該当するか否か  ⇒ 本事案では否定

次に本判決は、直接民法第714条第1項上の
「監督する法定の義務を負う者」に該当しないとしても、
法定の監督義務者に準ずべき者に該当する場合は、
衡平の見地からその者に対し損害賠償責任を問うことができると述べています。
さらに、このような法定の監督義務者に準すべき者に該当する場合とは、
当該認知症患者の方の「監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合」、
それは「その者が精神障害者を現に監督しているか
あるいは監督することが可能かつ容易であるなど
衡平の見地からその者に対し精神障害者の行為に係る責任を問うのが相当といえる
客観的状況が認められるか否か」
という観点から判断すべきとしているのです。
その上で、本事案の妻と長男をこのような判断枠組に個別に当てはめた結果、
両者とも法定の監督義務者に準ずべき者にも該当しないという結果を導いています。
したがって、上記の判断枠組(1)とは異なり、今後は別の事案においては、
認知症患者の家族が判断枠組(2)の法定の監督義務者に準ずべき者に当たり
結果的に損害賠償責任を負うことになる余地が残ったと言えます。


なぜ最高裁はこのような2段の判断枠組を示したのでしょうか。
これはあくまで私見となりますが、
認知症患者の介護という特に切実な問題に関しては
法的な判断よりも価値判断の要素を色濃く反映させたいという、
最高裁側の意図があるのではないかと感じます。
本事案では、認知症の方自身も電車にはねられて死亡したという
被害者であることのほか、損害を負った相手方が大手の鉄道会社ということから、
一個人に過ぎない家族の方を救済すべきだという価値判断が働いたのだと思います。
これが、同じ認知症の方の損害賠償事件でも、
その方が誤って小さな子どもを傷つけたような場合には、
結論が異なってくる可能性があります。
その意味では、本判決を冒頭に紹介した
「介護の実情に配慮した画期的な判断」「認知症患者の家族に大変温かい判決」
などと判断するのは早計ではないでしょうか。
今後の判例の蓄積を待ちたいところです。



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【3】あいうえお順で覚える!!法律用語
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「め」で始まる法律用語

【名変登記(めいへんとうき)】

名変登記とは、「登記名義人表示変更登記」の略で、
不動産の所有権の登記名義人(所有者)等が引っ越して住所が変わった場合や、
結婚等で氏名に変更があった場合に、登記記録上の住所氏名を
現在の住所氏名と一致させるために行う登記のことをいいます。

名変登記には、いつまでにしなければならないという期限は特にありません。
ただ、例えば不動産を売却して所有権移転の登記をする場合や、
抵当権を設定して登記しようとする場合に、
所有者の印鑑証明書に記載されている住所と登記記録上の住所が
一致していないときは、
前提として名変登記の申請もする必要がありますので、注意を要します。
登記名義人が法人の場合も、本店を移転したり、商号変更をした場合には、
名変登記をすることになります。

なお、住所については、
行政区画の変更や住居表示の実施で地番が変更された場合など、
行政側の都合で変わることもありますが、
そのような場合でも、名変登記(住所変更の登記)は必要です。
ただし、所定の証明書類を提出すれば、
登録免許税(不動産1個につき1,000円)は、非課税となります。


次回は「も」から始まる用語を解説します!



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【4】ラジオ番組レポート!
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