【CLOSE UP】 Vol.120 遺言の種類/税制適格ストック・オプションの発行手続留意点
2017.05.31更新
★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ CLOSE UP Vol.120 司法書士法人・行政書士法人 星野合同事務所 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇2017/5/31◇━━ ◎はじめての方へ このメールは当事務所お取引先、または当事務所所員が名刺交換させていただい た方、メルマガ配信登録をしていただいた方に配信させていただいております。 登記、法務、許認可等に関し、有用と思われる情報を少しずつ提供致します。 ※配信停止を希望される方はお手数ですが、件名に「配信停止」と入れ、 closeup@snnm.jpまで空メールをお送りください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★ INDEX ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 【1】遺言の種類 【2】税制適格ストック・オプションの発行手続留意点 【3】あいうえお順で覚える!!法律用語 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 【1】遺言の種類 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 遺言は、遺言者の最終意思を死後に、実現するための大切な手続きです。 遺言は、大きく分けて普通方式の遺言と特別方式の遺言に分けられます。 普通方式の遺言は、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類あり、 特別方式遺言は、一般危急時遺言、難船危急時遺言、伝染病隔離者遺言、在船遺 言と4種類があります。 どれも要件があり、その要件を満たしていない場合は無効になる可能性があるの で注意が必要です。その他、意思能力が無いものが遺言をした場合、公序良俗に 反する場合、錯誤の場合、共同遺言の場合、被後見人が後見人やまたはその配偶 者、もしくは直系卑属の利益となるような遺言をした場合も無効です。ただし、 直径血族、配偶者または兄弟姉妹が後見人である場合は無効になりません。 今回は、よく使われている普通方式の遺言についてまとめてみましたのでご参考 にしていただけたら幸いです。 ◆自筆証書遺言 (要件) ①遺言の全文及び日付および氏名を遺言者自身が自書し押印。 ②遺言者の最後の住所地を管轄とする家庭裁判者に検認の申立てを行い検認を要 する。 ※検認手続とは相続人に対して遺言の内容を知らせ、遺言書の偽造や変造を防止 するための検証、証拠保全手続である。有効か無効かを判断する手続ではない。 (メリット) ①遺言の作成を自身で簡単にでき費用が発生しない。 ②遺言の内容を誰にも知られないようにできる。 ③保管方法を自身で決められる。 ④証人という第三者を要しない。 (デメリット) ①遺言者の死後、発見されない可能性がある。 ②偽造や変造される可能性がある。 ③内容を誰にも知られずに作成できるため内容が不明確であったり解釈や遺言の 効力について争われる危険性が高い。 ④家庭裁判所の検認手続を行う必要がある。 ⑤方式に不備があり無効になる可能性がある。 ◆公正証書遺言 (要件) ①証人2人以上の立会が必要。 ②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授する。 ③公証人が、遺言者の口授を筆記し、遺言者および証人に読み聞かせ、もしくは 閲覧させる。 ④遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を 押すこと。但し、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を 付記して、署名に変えることが可能 ⑤公証人が、その証書は方式に従って作成されたものであることを付記して、こ れに署名、押印する。 (メリット) ①公証人が内容まで関与するため偽造や変造のリスクが少なく遺言の効力を争わ れるリスクが少ない。 ②家庭裁判所での検認手続が不要のため、迅速に遺言を実現するための作業に入 ることができる。 ③遺言書の原本は公証役場にて保管されるため隠匿または破棄されてしまうリス クがなく、万が一破棄された場合でも、原本の謄本をいつでも請求することがで きる。尚、日本全国の公正証書遺言がオンラインにて一元管理されるようになり 、遺言者の死後にどの公証役場に照会をしても公正証書を残していたかを確認す ることができるようになっている。 (デメリット) ①遺言内容が証人や公証人に知られてしまう。 ②手続が面倒で公証人へ支払う費用が発生する。 ◆秘密証書遺言 (要件) ①遺言書に署名・捺印(署名は自らしなければならないが、捺印は意思に基づく 者であれば他人にさせてもよい。) ②遺言書作成は全文自書が要件とされていない。パソコンでも構わない。代筆で も構わないがその場合は公証人に申述しなければならない。 ③作成した証書を封筒に入れて、遺言書に押印した印により封印する。 ④公証人と証人の面前で自分の遺言書であること、筆者は自分であることを述べ る。 ⑤公証人は封筒に証書の提出日、申述内容を記載し、遺言者、証人全員、公証人 が署名・捺印を行う。 (メリット) ①署名は自身が行う必要があるが、遺言書全文を自筆する必要が無い。 ②内容を秘密にできる。 ③遺言の変造・偽造を防止できる。 (デメリット) ①方式の不備により遺言が無効になる可能性がある。(自筆証書の要件を満たし ているのであれば自筆証書として有効) ②家庭裁判所の検認手続を行う必要がある。 ③公証人へ支払う費用が発生する。 ④隠匿・紛失の可能性がある。 遺言書は残された方への最後の言葉です。 その大切な言葉が、無効にならないよう作成する前に、専門家へご相談いただく ことをお勧めいたします。 当事務所ではご相談を無料で行っております。 まずはどのような遺言書にしたいのかお聞かせいただき、一緒に遺言書完成まで をサポートさせていただきます。先ずは、お気軽にお問い合わせください。 ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 【2】税制適格ストック・オプションの発行手続留意点 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ストック・オプションという用語は、法律上の用語ではないものの、会社の従業 員等に対するインセンティブ付与等を目的として発行される新株予約権を一般的 に指す言葉として社会的に認知されてきたように思われます。そしてストック・ オプションの中でもいわゆる税制適格ストック・オプションは、権利行使期間や 権利行使可能価額に一定の制限が加わることからインセンティブとして機能しな いのでは無いかとの指摘も一部ではなされているものの、特に株式上場を目指す 会社にとって広く活用されています。 さて、上述の税制適格ストック・オプションのうち、特にストック・オプション 割当契約書上配慮を要する要件の一つとして、ストック・オプションの権利行使 期間をその付与決議の日後2年を経過した日から10年を経過する日までとしなけ ればならない旨の規定があります。法律の該当条文をそのまま引用致しますが、 以下のとおりです。 租税特別措置法第29条の2 (本文略) 一 当該新株予約権若しくは新株引受権又は株式譲渡請求権の行使は、当該新株 予約権若しくは新株引受権又は株式譲渡請求権に係る「付与決議※」の日後二年 を経過した日から当該付与決議の日後十年を経過する日までの間に行わなければ ならないこと。 (※は本稿にて特別に追加) ここで重要なのは「付与決議」とは一体何を意味するのか、という点です。スト ック・オプションつまり新株予約権の発行手続は会社法上に詳細に定められてい ますが、会社法上は新株予約権の「付与」という用語の使い方はされていません 。上記租税特別措置法上の「付与決議」は、会社法上の新株予約権の発行手続に おいてどの段階を指しているのかが明確ではないのです。 可能性としては以下の3つが考えられます(以下はいわゆる非公開会社でかつ取 締役会設置会社を想定の上で話を進めます)。 ① 株主総会における新株予約権の募集事項の決定決議 (会社法第238条1項、2項)のみを指す ② ①に加え、株主総会において募集事項決定の委任決議を行っている場合は、 当該委任決議及び委任を受けた取締役会における募集事項の決定決議 (同第239条1項)を指す ③ ①②に加え、取締役会における新株予約権の割当対象者の決定決議 (同第243条第1項、2項)を指す 上記租税特別措置法上の「付与決議」は、最低限会社法上の新株予約権の募集事 項決定の決議を指していることは確実かと思われます(そう解釈しないと「付与 決議」を意味するものが無くなってしまうからです)。そうであれば、上記のう ち①は適当では無く、少なくとも②または③と解するのが相当と考えられます。 次に②か③のどちらが「付与決議」であるかは、最終的には税務署の判断に依存 するものの、実務上は保守的に③まで租税特別措置法上の「付与決議」を指すと 考えた上で権利行使期間を設定した方が無難であると考えられます。よって、こ の点の検討を厳密に行わずに税制適格ストック・オプションの権利行使期間を定 めると、上述の2年以上10年以内との税制適格要件を満たさなくなる、つまり税 制非適格となってしまう可能性が生じます。 本稿では触れられませんでしたが、税制適格ストック・オプションの要件に関す る論点は他にも存在致します。ストック・オプションを「付与」する際は、専門 家を交えて慎重に要件を検討されることをお勧め致します。 ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 【3】あいうえお順で覚える!!法律用語 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「え」で始まる法律用語 【営業の自由(えいぎょうのじゆう)】 営業の自由とは、営利追求を目的として主体的に職業を継続することである。 営業の自由を保障する憲法の直接の条文はないが、憲法第22条1項で保障する 「職業選択の自由」は、自己の従事する職業を決定する自由のみならず、「営業 の自由」も含むとするのが通説である。 第22条1項 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。 職業選択の自由は経済的自由の一つであり、表現の自由などの精神的自由に比べ て、合憲性が推定され緩やかな審査基準が適用される。(二重の基準論)また、 規制の合憲性は、厳格な合理性の基準による消極目的規制と明白性の基準による 積極目的規制に分けられ、審査される。(規制目的二分論) 次回は「お」から始まる用語を解説します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■発行:星野合同事務所 https://hgo.jp/ ■お問い合わせ closeup@snnm.jp 03-3270-9962 ■バックナンバー https://hgo.jp/mailmaga/ 掲載文章の無断転載を禁じます。情報内容には万全を期していますが、 これに基づき万が一損害が発生した場合には責任を負いかねます。 All Rights Reserved, Copyright (C) Hoshino Godo Office. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★