死後認知-無戸籍の解消
2014.10.27更新
死後認知-無戸籍の解消
平成26年10月10日、30年間無戸籍だった女性が起こした、死亡した実父との死後認知を求めた訴訟の判決が言い渡されました。
女性の母親は、実父との間の子を産んだ後、役所に届けずに無戸籍のまま女性を育てました。女性の母親は、子を産んだ当時、別の男性とすでに婚姻状態にあり、役所に届けると戸籍上は実父との子にはならないため、出生届を出さずにいました。
在、女性には、事実上の婚姻関係にある男性とその間に子がおり、この判決が確定し、判決文などを役所に提出すれば、女性はその男性や子と同じ戸籍に入ることができます。
認知の訴え(強制認知)
民法は、非嫡出子とその親との親子関係の発生に、原則として親の認知を要求しています。しかし、認知により親子関係の発生を拒む親の存在を想定し、非嫡出子である子の利益を守るため、強制的に親子関係を発生させる制度を用意しました。これが、認知の訴え(強制認知)と呼ばれる制度です。
条文上も、子は、父又は母に対し、認知の訴えを提起することができると規定されています。ただし、父又は母が死亡してから3年を経過したときは、原則として訴えを提起することができません。父又は母が死亡している場合、訴えの相手方は検察官となります。提訴期間が3年と制限されている理由は、期間が長すぎると親子関係を証明する証拠が不明確になるためです。ただし、この制限には、3年以上経過しても、親子関係の事実が明らかである場合もあるため、厳格に過ぎるとの批判もあります。
無戸籍の女性の父親は、平成23年12月に死亡し、平成26年7月、女性は家庭裁判所に訴えを提起しました。DNA型鑑定はできませんでしたが、知り合いの証言を基に親子関係が認められました。
法務省の実態調査によると、無戸籍状態の人は、平成26年10月10日時点で全国に少なくとも279人います。法務省は、この問題に取り組んでおり、今後、ますますこの問題の解消が期待されています。
【民法】
(認知)
第七百七十九条 嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。
(認知の訴え)
第七百八十七条 子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。
【人事訴訟法】
(被告適格)
第十二条 人事に関する訴えであって当該訴えに係る身分関係の当事者の一方が提起するものにおいては、特別の定めがある場合を除き、他の一方を被告とする。
2 人事に関する訴えであって当該訴えに係る身分関係の当事者以外の者が提起するものにおいては、特別の定めがある場合を除き、当該身分関係の当事者の双方を被告とし、その一方が死亡した後は、他の一方を被告とする。
3 前二項の規定により当該訴えの被告とすべき者が死亡し、被告とすべき者がないときは、検察官を被告とする。