星野合同事務所

貸金業法改正 総量規制と上限金利の引下げが焦点

2010.04.14更新

貸金業法改正 総量規制と上限金利の引下げが焦点

貸金業法の第5次改正が目前に迫り、管轄官庁である金融庁から総量規制の要件緩和などの対応が発表されています。改正の目玉といわれる今回の貸金業法の改正についてまとめると次のとおりです。

改正内容
改正事項 具体的内容
貸金業務取扱主任者の設置(12条の3) 1事業所毎に1人以上の貸金業務取扱主任者の設置義務
最低純資産額の引上げ(6条3項) 貸金業者の純資産額を5000万円を下回らない政令で定める金額に引上げ
事前書面交付義務(16条の2) 契約締結前までに契約内容を説明する書面の借主になろうとする者に対する交付義務
指定信用情報機関 貸金業者の信用情報機関への加入義務及び信用情報機関の情報の使用義務
総量規制(13条の2) 原則として年収の3分の1を超える契約の締結禁止
刑罰金利の引下げ(5条2項) 高金利違反の金利を29.2%から20%に引下げ

特に総量規制上限金利の引下げが主要な改正となります。

総量規制

貸金業者は、貸付にあたり顧客等の収入その他資力、信用、借入れの状況、返済計画その他の返済能力に関する事項を調査する義務が課せられ、貸付の契約を締結することで当該借主の借入額が年収の3分の1を超える場合は、過剰貸付として禁止されます。

ただし、過剰貸付については、「当該個人顧客の利益の保護に支障を生ずることがない契約として内閣府令で定めるものを除く」と例外規定があります。具体的には売却可能な資産がある場合等がこれにあたるとされていますが、その他、法律改正に伴い生じると予想されている中小事業者の資金繰りを助けるため、緩和させる方向での案が発表されています。

  1. 総量規制に該当する者の借入残高を、段階的に減らすための借り換えを推進
  2. 個人事業者が提出する事業計画などを簡素化
  3. 個人事業者の安定的な「事業所得」を総量規制の年収として算入
  4. 総量規制の適用除外と例外の再検討

その他、やみ金融の取締りの強化や貸金業法改正の周知なども盛り込まれています。

上限金利の引下げ

これまでは利息制限法の民事上の制限利率(10万円未満は年20%、10万円以上100万円未満は年18%、100万円以上は年15%)と出資法の刑事上の利率(年29.2%超過利率)との差がグレーゾーン金利と呼ばれ、過払い金等さまざまな問題の原因となっていましたが、今回の改正で、出資法で規定する刑事上の利率が年20%に引き下げられ、これ超える場合は刑事罰の対象となります。

また、ほかにも次のような改正が行われます。

  • 金銭貸借の媒介手数料は、その媒介に係る貸借金額の5%が上限
    (100万円の貸借の場合、媒介手数料は5万円まで)
  • 金銭貸借の保証の媒介手数料は、その媒介に係る保証料の5%が上限
  • 日賦貸金業者(日掛金融)、電話担保金融の廃止

その他、労金が自己破産をした方に対する新たな融資制度の導入を発表するなど、改正に至るまで関係方面に動きがあることが予想されます。