貸金業法改正のポイント
2009.06.26更新
貸金業法改正のポイント
平成18年(2006年)に貸金業法が改正され,段階的に改正法が施行されていますが,現在の状況とその主な改正事項をご紹介します。
■第1次施行(平成18年12月20日施行)
多重債務問題に対する政府の責務について規定されました(附則66条)。政府が多重債務問題の解決に向けて関係省庁相互間に連携を強化して多重債務者への相談体制の整備や違法業者への取締りの強化等多重債務問題の解決策を推進する努力義務が定められ、具体的には多重債務者対策本部有識者会議が設置されました。
■第2次施行(平成19年1月20日施行)
無登録営業者やいわゆるやみ金融業者など違法業者や違法行為に対する罰則が加重されました。
違反行為の種類 | 旧法 | 改正法 |
---|---|---|
不正な手段による貸金業登録(47条1号) | 5年以下の懲役 1000万円以下の罰金 |
10年以下の懲役 3000万円以下の罰金 |
無登録営業(47条2号) | ||
名義貸し営業(47条3号) | ||
貸金業の登録申請書類への虚偽記載(47条の3 1号) | 100万円以下の罰金 | 2年以下の懲役 300万円以下の罰金 |
無登録での営業表示・広告・勧誘(47条の3 2号) | ||
登録営業所以外での営業行為 (47条の3 2号) |
1年以下の懲役 300万円以下の罰金 |
2年以下の懲役 300万円以下の罰金 |
広告における貸付条件の不記載・虚偽表示(48条2号) | 100万円以下の罰金 | 1年以下の懲役 300万円以下の罰金 |
広告における無登録連絡先の記載(48条2号の2) |
違反行為の種類 | 旧法 | 改正法 |
---|---|---|
年109.5%超過利息の契約締結、利息の受領または支払いの請求(5条3項) | 5年以下の懲役 1000万円以下の罰金 |
10年以下の懲役 3000万円以下の罰金 (法人に対しては1億円以下の罰金) |
上記規定を免れる行為(8条2項) |
■第3次施行(平成19年12月19日施行)
貸金業者の登録要件の強化及び行為規制が強化されました。また、監督官庁の監督も強化されています。なお、旧法である貸金業の規制等に関する法律が「貸金業法」に改められたのもこのときです。
改正(新設)事項 | 具体的内容 | |
---|---|---|
「貸金業法」への名称変更・貸金業法の目的規定の変更(1条) | ・名称「貸金業の規制等に関する法律」→「貸金業法」 ・目的に「貸金業が我が国の経済社会において果たす役割にかんがみ」を追加 |
|
登録要件の強化 (6条1項15号・16号) |
登録拒否要件に①貸金業を的確に遂行するための必要な体制が整備されていると認められない者、②他に営む業務が公益に反すると認められる者、を追加 | |
行為規制の強化 | ||
業務運営に関する措置 (12条の2) |
業務に関して取得した資金需要者等の情報の適正な取扱い、業務を第三者に委託する場合の的確な遂行等を確保するための措置を講じる義務 | |
禁止行為の強化 (12条の6) |
①資金需要者等に対する虚偽説明・契約内容の重要事実の不告知②資金需要者等に対する不確実事項の断定的判断の提供・誤認誘引行為③保証人となろうとする者に対して主債務者の弁済が確実であるとの誤認誘引行為④偽り・その他不正または著しく不当な行為 | |
生命保険契約の制限 (12条の7) |
借主の自殺を保険事故とする生命保険の禁止 | |
カウンセリング機関の紹介 (12条の8) |
資金需要者等の利益保護のため必要と認められる場合にカウンセリング機関の紹介をするよう努める | |
勧誘の規制(16条3項) | 資金需要者等の知識、経験等から不適当と認められる勧誘及び契約を締結しない旨の意思表示をした者に対する勧誘継続の禁止 | |
生命保険契約の同意前の書面交付(16条の3) | 貸金業者が死亡保険金を受けることを定める保険契約を締結する場合の同意を得る際の保険契約内容の書面交付 | |
帳簿書類の閲覧 (19条の2) |
債務者等から帳簿の閲覧・謄写を請求されたときの開示義務 | |
公正証書の規制 (20条) |
①利息制限法の制限超過利率による契約についての公正証書の作成の禁止②公正証書作成の委任状の取得禁止③公正証書による強制執行について書面による事前説明義務 | |
取立規制の強化 (21条1項) |
①債務者等から弁済等の時期について申し出を受けている場合に正当な理由なく日中に電話・訪問等による取立ての禁止②債務者等から退去すべき意思を示されたにもかかわらず居宅・勤務先等からの不退去の禁止③禁止行為のいずれかを行うことの告知の禁止、を追加 |
■第4次施行(平成21年6月18日施行)
貸金業者の財産的基礎要件の引上げと貸金業務取扱主任者資格試験制度の創設、指定信用情報機関制度が創設されています。
改正(新設)事項 | 具体的内容 |
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最低純資産額の引上げ(6条1項14号・3項・4項) | 貸金業者の純資産額を2000万円を下回らない政令で定める金額に引上げ |
貸金業務取扱主任者制度の創設(21条の8~24条の50) | 貸金業務取扱主任者資格制度を創設し、内閣総理大臣が試験を行う |
指定信用情報機関の創設(41条の13~41条の38) | 内閣総理大臣による信用情報機関の指定制度を創設 ・指定の要件、役職員等の秘密保持義務等 ・加入貸金業者に対する監督義務、他の指定信用情報機関への情報提供義務等 ・内閣総理大臣の立入検査、業務改善命令等の監督 |
第5次施行は平成22年6月19日までに施行予定です。利息制限法の改正やみなし弁済の廃止、総量規制等今回の法改正の目玉です。詳細については別途ご紹介します。