【CLOSE UP】 Vol.122 民事信託の留意点/法律と年齢のお話/広大地の評価の見直し
2017.07.31更新
★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ CLOSE UP Vol.122 司法書士法人・行政書士法人 星野合同事務所 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇2017/7/31◇━━ ◎はじめての方へ このメールは当事務所お取引先、または当事務所所員が名刺交換させていただい た方、メルマガ配信登録をしていただいた方に配信させていただいております。 登記、法務、許認可等に関し、有用と思われる情報を少しずつ提供致します。 ※配信停止を希望される方はお手数ですが、件名に「配信停止」と入れ、 closeup@snnm.jpまで空メールをお送りください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★ INDEX ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 【1】民事信託の留意点 【2】法律と年齢のお話 【3】広大地の評価の見直し 【4】あいうえお順で覚える!!法律用語 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 【1】民事信託の留意点 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 昨今、民事信託(家族信託)については、その設計の自由度の高さなどから、組 成件数が伸びているところ、それ故に信託契約組成にあたって、契約当事者が十 分に内容を理解した上で、様々なケースにも対応できる契約内容にする必要があ ります。 そこで、基本的な注意点を確認したいと思います。 1)契約当事者・特に委託者の意思能力・契約内容の理解 民事信託は高齢者の判断能力低下への対策として利用されることが多いと思われ ます。そのため、信託契約の内容によっては事後的に委託者の意思能力の有無が 問題となる可能性があります。実務上は、委託者の意思能力について争われる可 能性をできるだけ低くするため、または,遺言、任意後見契約等の手続を合わせ て行うため、あるいは利用する金融機関の要請などから公正証書により信託契約 を締結することが多いようです。 しかし、公正証書遺言であっても遺言能力を否定する裁判例が存在していること を踏まえると、公正証書により信託契約を締結したからといって必ずしも委託者 の意思能力を否定される危険性を完全に回避できるわけではないと考えるべきで す。したがいまして、これは信託契約に限ったことではございませんが、契約当 事者・特にご高齢の委託者について、判断能力の低下等に注意を払い、契約内容 を十分に理解していただいた上で信託契約を締結する必要があることから、その 契約内容はできるだけシンプルかつ明確な内容にすべきであると考えます。 2)受託者の知識・受託者業務の遂行能力 民事信託の受託者としては委託者の親族等、一般の方が想定されています。そし てその受託者が信託に関し十分な知識・能力を有していない場合、受託者の分別 管理義務や、帳簿等の作成等、報告および保存の義務について、適切な履行がな されない場合があり得ます。このことから、信託契約組成時には受託者において 、契約内容の理解と共に、受託者業務を遂行する能力の有無等についても充分に 検討する必要があります。 信託法上は、受益者および委託者に対して受託者の監督のための権限が付与され ているものの、民事信託の受益者・委託者も信託については十分な知識を有して いない可能性があり、特に委託者兼受益者がご高齢者である場合は、信託設定後 に判断能力が低下し、委託者兼受益者本人が信託法上の監督権限が適切に行使す ることができないおそれが十分に考えられます。したがって、第三者への信託事 務代行の定め、あるいは信託監督人若しくは受益者代理人等の受益者保護関係人 の定めを信託契約に盛り込むなど、受託者を監督し、組成された信託契約が適正 に機能するような工夫が必要です。また、適切な受託者候補者がいない場合は民 事信託ではなく商事信託の活用も検討すべきだと思います。 3)受託者の任務終了 民事信託では、上記の通り、委託者の親族等、個人が受託者となることが多いと ころ、信託法上、個人の受託者については、破産等に加え、死亡、後見開始およ び保佐開始も任務終了事由となっているため(信託法第56条)、法人受託者の 場合と比較すると、受託者の任務が終了する事態が生じる可能性が高いといえま す。この場合においても滞りなく信託事務が継続して履行されるようにするため に、あらかじめ、受託者法人の設立、あるいは後継受託者候補者の指定の定めな どを盛り込むことを検討すべきだと思います。 弊所において、民事信託契約の組成についてご相談を承っております。お気軽に ご相談ください。 ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 【2】法律と年齢のお話 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 比較的最近話題になった法改正として選挙権年齢の引き下げは皆様もご記憶に新 しいのではないでしょうか?公職選挙法の改正により70年ぶりに年齢が引き下 げられ、選挙権が「満20歳以上」から「満18歳以上」となりました。 そう考えますと、年齢の境界は様々な場面で法定されています。まず未成年者は 民法で「満20歳未満の者」としいます。少年法上の「少年」は「20歳未満の 者」。児童福祉法では、児童は「満18歳に満たない者」。その中で、乳児は「 満1歳に満たないもの」、幼児は「満1歳から小学校就学の始期に達するまでの 者」、少年は「小学校就学の始期から満18歳に達するまでの者」となります。 変わって、馬券は競馬法で「未成年者は、勝馬投票券を購入し、又は譲り受けて はならない。」とされ、パチンコは風営法上、18歳未満の者の立ち入りを店側 に禁止させています。TOTOはスポーツ振興くじ法により19歳に満たない者 は投票券を購入し、又は譲り受けてはならないとされ、微妙に違います。 他、刑法の刑事責任年齢は満14歳。遺言は、15歳に達した者は可能。道交法 上、普通二輪免許は、与えない者として16歳未満の者を規定しています。 ところで、学校の学年(就学時期)は、なぜ4月2日生まれの人から始まるので しょう?これも「年齢計算ニ関スル法律」という明治35年制定の法律に根拠が あります。 「年齢ハ出生ノ日ヨリ起算ス」。これは出生日が生後1日目(起算日)なので、 年齢が1つ増える(満年齢に達する)のは、誕生日前日の午後12時であり、4 月1日生まれの人は3月31日に1つ年齢が増えることになります。そこで「学 校教育法」ですが、「子の満6歳に達した日の翌日以降における最初の学年の初 めから・・・就学させる」とあるので、3月31日に満6歳に達すると、その翌 日以降の最初の学年の初め、まさに翌日の入学となります。4月2日生まれだと 、4月1日に満6歳になるので、翌日以降の学年の初め、すなわち翌年4月1日 からの就学となり、同じ学年は4月2日から翌年4月1日生まれの生徒で構成さ れることになります。 法が年齢を制限することは、未成年を中心とした弱者の財産、身分行為、人身等 の保護に向けその法益の実現を図っているといえます。世界的には140以上の 国、地域で成人年齢は18歳またはそれ以下。今後の民法改正案では、成人年齢 の18歳への引き下げ、女性の婚姻適齢の18歳への引き上げが検討され、18 歳の男女は父母の承諾なしで婚姻可能となるかもしれません。今後どのように年 齢制限が定められるのか、見守りたいと思います。 ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 【3】広大地の評価の見直し ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 平成29年度税制改正大綱にて、広大地評価方法の見直しが明らかになりました 。これにより平成30年1月1日以降から相続等により取得した広大地の評価方 法が変わります。 現行評価方法である面積に比例的に減額する方法から、各土地の個性に応じて、 形状・面積に基づき評価する方法に見直すとともに適用要件を明確化することと され、平成29年6月22日発表のパブリックコメントにより、具体的な計算方 法が改正(案)として発表されました。 パブリックコメントのため未だ確定ではありませんが、改正後の評価方法による と現行に比して課税が強化されるケースが多いと想定されます。 したがって、現行の広大地の評価制度を前提として相続税を試算されている方は 、改正後の評価方法で改めて試算をする必要があると思われます。 また、その結果、改正後の評価方法で広大地を相続により承継するよりも、現行 評価方法のうちに対策をしておいた方が有利になるケースも出てくるかと思われ ます。 当事務所では、資産税に強い税理士と連携し、相続・資産承継対策のご提案をい たしておりますので、広大地を所有されている方は、お気軽ご相談下さい。 ※広大地とは次の要件に合致する土地をいいます。 ①1,000㎡以上(三大都市圏では500㎡)の面積であること ②地上階数3階以上のマンション適地ではないこと(容積率が300%未満) ③開発行為をした場合、道路等の公共的施設の負担が必要になる土地であること ④大規模工場用地に該当しないこと ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 【4】あいうえお順で覚える!!法律用語 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「か」で始まる法律用語 【外国会社(がいこくがいしゃ)】 外国会社とは、外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体であっ て、会社と同種のもの、または会社に類似するものをいいます。日本でも、外国 会社の法人格は認められますが、外国会社が日本において取引などの営業活動を 行う場合には、日本国内に住所を有する「日本における代表者」を最低でも1名 以上定め、日本の法務局にて外国会社の登記を行う必要があるなど、会社法では 外国会社に対する特別な規定を設けています。 次回は「き」から始まる用語を解説します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■発行:星野合同事務所 https://hgo.jp/ ■お問い合わせ closeup@snnm.jp 03-3270-9962 ■バックナンバー https://hgo.jp/mailmaga/ 掲載文章の無断転載を禁じます。情報内容には万全を期していますが、 これに基づき万が一損害が発生した場合には責任を負いかねます。 All Rights Reserved, Copyright (C) Hoshino Godo Office. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★