星野合同事務所

DV防止法等と不動産登記

2015.05.07更新

例えば、売買による所有権移転登記を申請する場合、その登記義務者が登記記録上の住所から転居している場合には、所有権移転登記の前提として、登記記録上の住所を現在の住所に変更する必要があります。

ところが、登記義務者が「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(以下「DV防止法」という)の支援措置を受けている被支援措置者である場合、この住所変更登記をすると、配偶者に現在の住所を知られてしまう恐れがあります。

そのため、この場合は、登記名義人の住所の変更登記をすることを要しないとの取扱いになっています。(平成25年12月12日付法務省民二第809号通知)

また、登記完了後、登記申請書及びその添付書類その他の附属書類は保管され、利害関係人が閲覧できることになっていますが、この附属書類の保管については、申請が被支援措置者によるものであることが一見して明らかになるような措置が施されることになります。また、この附属書類の閲覧については、当該被支援措置者及びその代理人以外の者は利害関係を有しないものとされ、閲覧できないものとされています。(前記同通知)

さらに、登記権利者が被支援措置者である場合、住民票に記載された前住所または前々住所等で登記申請することが可能になりました。

この場合、登記権利者の印鑑証明書を添付して、「住民票の住所地は配偶者等の暴力を避けるための臨時的な緊急避難地で、登記申請書に記載した住所が生活の本拠である」旨の上申書及び「支援措置を受けている」旨の証明書を添付することとなります。(平成27年3月31日付法務省民二第196号通知)登記簿の附属書類の閲覧に関しても、登記義務者が被支援措置者である場合と同様の取扱いとなります。(前記同通知)

また、被支援措置者が、登記申請の登記権利者、登記義務者ではない場合でも、申出により、登記申請書及びその附属書類の閲覧を制限することが可能になっています。

DV防止法の被害者として住民票の措置を受けている者について、登記申請の登記権利者、登記義務者とはならないが、登記申請書の添付書類に被支援措置者の住所が記載されている場合は、被支援措置者またはその代理人から申出があった場合、登記申請書等の閲覧が制限されることとなります。

この場合、住所部分を塗抹するなどした写しを申請書類つづり込み帳につづり込み、閲覧の制限があることが一見して明らかになるような措置が施され、閲覧しても住所を知ることができないものとなります。(平成27年3月31日付法務省民二第198号通知)

なお、これらの取り扱いは、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」で規定するストーカー行為等の相手方、また「児童虐待の防止に関する法律」で規定する児童虐待を受けた児童等についても同様とされています。