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農地法の改正に伴う農業分野の参入に関して

農地法の改正案が、平成21年6月17日に成立し、同月24日に公布され、本年12月に施行される見通しとなりました。これに基づき、農業分野への参入要件について、解説いたします。


法の目的の改正

同法の改正により(以下、改正された法律を「新法」といいます。)見直された点としては、同法の目的について、現行法(以下、「旧法」といいます。)においては、「農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めて、耕作者の農地の取得を促進する」(旧法1条)ことでにあったのに対し、新法においては、「農地を効率的に利用する者による農地についての権利の取得を促進し、~」(新法1条)と改正されました。

これは、農地について、旧法において「耕作者が所有すること」を基本とすることから、新法においては「効率的な利用」へと、法律の基本的な考え方がシフトしたことを意味します。

これにより、農地の所有権の移転について改正が加えられたことはもとより、その貸借について、規制を緩和し、必ずしも主たる業務として農業を行わない企業(株式会社)に対しても、農地を効率的に利用するという条件付きながら、農地を借入れ、耕作を行うことにより農業分野への進出が可能となる余地が生まれました。

以下、1農地を法人において利用する要件と、2農地を利用する権原の取得方法にポイントを絞って、解説いたします。


農地を利用する法人
(1) 農業生産法人

所有権の移転、地上権・永小作権・質権の設定、移転を行うには、農業委員会ないしは都道府県知事の許可が必要となります(法3条1項)。そして当該許可は法人においては、農業生産法人のみ、受けることが可能です(法3条2項2号)。

農業生産法人とは、以下の要件を全て満たしているものをいいます。

1 法人形態要件

  • ア 農事組合法人
  • イ 株式会社(公開会社でないものに限る)
  • ウ 持分会社(合同会社・合名会社・合資会社)
  会社法人 組合法人
  株式会社 合名会社 合資会社 合同会社 農事組合法人
根拠法 会社法
(25条)
会社法
(576条2)
会社法
(576条3)
会社法
(576条4)
農業協同組合法(72条の16)
構成員 1人以上の株主(有限責任) 2人以上の無限責任社員 2人以上の無限責任社員及び有限責任社員 1人以上の有限責任社員 3人以上の農民(自ら農業を営み又は農業に従事する個人)
備考 株式の全部について譲渡制限があること        

2 事業要件

その法人の主たる事業が農業であること。(新法2条3項1号)

会社法人における「主たる事業が農業であること」の要否は、農業とその農業に関連する事業の売上高が法人の事業全体の売上高の過半を占めていなければなりません。

法人の形態 会社法人 組合法人
実施できる事業 1農業 1農業
2農業に関連する事業
(農畜産物を原料又は材料として使用する製造又は加工、その他貯蔵、運搬又は販売、農業生産に必要な資材の製造、農作業の受託、農村滞在型余暇活動に利用されることを目的とする施設の設置及び運営並びに宿泊者に対する役務の提供)(新法2条3項1号、規則1条の2)
2農業に関連する事業
(農畜産物を原料又は材料として使用する製造又は加工、その他貯蔵、運搬又は販売、農業生産に必要な資材の製造、農作業の受託、農村滞在型余暇活動に利用されることを目的とする施設の設置及び運営並びに宿泊者に対する役務の提供)(農業協同組合法72条の8)
3農業と併せて行う林業(新法2条3項1号) 3農業と併せて行う林業(農業協同組合法72条の8)
4その他事業(農業以外の事業でも可) 4農業に係る共同利用施設の設置、農作業の共同化に関する事業
514に付帯する事業
農業生産法人と
認められるための要件
123の売上が14の売上の過半を占めなければならない  

3 構成員要件

その法人の構成員(株式会社にあっては株主、合名会社・合資会社・合同会社にあっては社員、農事組合法人にあっては組合員)が、すべて、以下に掲げる者のいずれかであること。(新法2条3項2号)

図

4 役員要件

その法人の常時従事者(その法人の行う農業に年間150日以上従事すること・規則1条の7)たる構成員(株主、社員又は組合員)が取締役、業務執行社員、理事の数の過半を占め、かつ、その過半を占める理事等の過半数の者がその法人の行う農業に必要な農作業に年間60日以上従事すると認められる者であること。


(2) 農業生産法人以外の法人(上記4つの要件を満たさない法人)

今回の法改正により、農業生産法人または農業組合法人の要件を満たさない法人(株式会社等)であっても、一定の条件付ながら、農地の使用権原を持つことが認められました。

その条件とは、農地について、使用貸借による権利又は賃借権が設定されている場合において、これらの権利を取得しようとする者がその取得後においてその農地を適正に利用していないと認められる場合に、当該使用貸借又は賃貸借を解除する旨の条件が書面による契約において付されている場合に限り、(農業委員会又は都道府県知事は)農業生産法人以外の法人においても農地の使用貸借又は賃借が許可をすることができる(新法3条3項)(新設)。

本規定は、旧法において、「農地はその耕作者が所有することを最も適当である」という考え方から、新法において、「農地を効率的に利用する者による農地についての権利の取得を促進する」という考え方にシフトしたという意味で、重要な改正となります。


農地を利用する権原の取得方法

(1) 農業生産法人

農業生産法人の要件を満たす法人であれば、農業委員会ないしは都道府県知事の許可を得て、農地の所有権の取得、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権、もしくはその他の使用収益権を設定し、これを移転することが可能となります(新法3条1項)。

(2) 農業生産法人以外の法人

農業生産法人以外の法人であっても、当該農地の有効利用を行っていなければ契約が解除されるという条件が書面において行われているという場合に限り、農業委員会ないしは都道府県知事の許可を得て、使用貸借による権利又は賃借権を取得し、農地を使用収益することが可能となります(新法3条3項)。

ただし、当該許可を得て使用収益権を取得した場合において、農地を適正に利用していないと認められるにもかかわらず、その契約が解除されない場合は、農業委員会ないしは都道府県知事は当該許可を取り消さなければならないこととされています(新法3条の2)。


既に改正法は成立し、公布されておりますが、政権の交代により、改正法がそのまま施行されない可能性も残されています。当事務所では、今後もニュース&トピックス、メールマガジン等で順次情報を発信いたしますので、是非ご注目ください。

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